「腎機能低下患者の把握および注意喚起のためのCKDシールを用いた取り組み」
日 程:2012年6月16~17日
場 所:札幌コンベンションセンター
研究者:(株)まつもと薬局
大野 伴和、田中 啓介、藤原 舞子、小川 美喜、松本 健春
演 者:大野 伴和
はじめに
現在保険薬局において腎機能低下患者を把握するためには患者が持参した検査表を確認するほか方法はない。
2010年4月より熊本県内4病院の薬剤師(柴田ら)が「CKDシール」と呼ばれるお薬手帳に貼付するシールを作成し、保険薬局への注意喚起を目的として活用を図っている 。(日本腎と薬剤研究会学術大会にて活動報告あり)
そこで、今回当薬局においても、腎機能低下患者の把握および他の保険薬局・医療機関への注意喚起を目的として、このCKDシールの活用とアンケート調査を実施した。
事例紹介
1、熊本県内4病院の薬剤師
熊本PK/PD研究会作成
あえて一般の人には何が書いてあるのか分かりにくい表記になっている。
(シールは済生会熊本病院薬剤部 柴田氏より提供頂いた。)
CKDシール熊本PK/PD研究会作成あえて一般の人には何が書いてあるのか分かりにくい表記になっている。(シールは済生会熊本病院薬剤部 柴田氏より提供頂いた。)
2、滋賀県内の9病院
シールは、滋賀腎・透析研究会作成(直径2cmの円の中に腎臓と薬のイラストを黄色で表したもの)
CKDのステージが3以降(egFRが60未満)の患者がこれらの病院の医師の診察を受けた場合に、医師がお薬手帳の表紙にこのシールを貼付する。⇒薬局薬剤師は、患者が持参したお薬手帳をみれば 腎機能が低下していることを把握できる。
方法
期間
2011年11月~2012年3月まで
対象患者
65歳以上の患者あるいは服用薬剤から腎機能が低下が予想される患者
調査方法
あらかじめ作成した調査用紙の内容に基づいて随時聞き取り調査を行い、腎機能の低下が判明した場合には、CKDシールをお薬手帳に貼付し、あわせて検査値も記載した。
聞き取りを行う対象患者の目安
【65歳以上の患者】
【以下の薬剤を服用している患者】
・カルタン錠、レナジェル錠(リン吸着剤)
・クレメジン(球形吸着炭)
・アーガメイト、カリメート(K交換樹脂)
・腎排泄型薬剤の減量、投与間隔延長
・ARB○降圧利尿剤
・抗血小板剤
・高尿酸血症治療薬
・コレステロール薬
・甲状腺薬
・ビタミンD3製剤
・糖尿病薬
調査用紙の内容
egFR(推算糸球体ろ過量)早見表
お薬手帳へのCKDシールの貼付例
聞き取りを行った患者の内訳
服用薬剤あるいは聞き取りから腎機能の低下が判明した患者
腎機能低下患者の服用薬剤
アンケート結果
- シール貼付拒否シール貼付拒否 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・1名
(当薬局しか来ていないため不要) - お薬手帳作成お薬手帳作成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9名
- 疑義照会に至ったケース疑義照会に至ったケース ・ ・ ・ ・ ・ 0名
- シールの話でお薬手帳を出してくれた人シールの話でお薬手帳を出してくれた人 ・ ・ 2名
透析患者へのCKDシールの貼付
透析患者=自己申告がなければ処方内容から判断することが難しいこともある。
お薬手帳をみて、腎機能の低下が把握できれば、過量投与を未然に防ぐことが可能となる。
当薬局を受診している透析患者数:39名
- CKDシールを貼付した患者数 ・ ・ ・ ・ ・ 28名
- 手帳持参率・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 71.8%
まとめ
1)、腎機能の低下が明らかなのにも関わらず、自身の腎機能を把握していない患者が比較的多くみられた。
CKDシールをお薬手帳に貼付し腎機能についての説明をすることで、腎機能を患者に再度意識させることができたと考えられる。
2)、高齢(平均76.8歳)にも関わらず腎機能は問題ないと回答した方が多くみられた。
処方箋上に腎機能検査値が表記される等すれば、更にシールの使い道も増えてくるのではないかと考えられる。
3)、シールの貼付をきっかけに、お薬手帳作成に至ったケースもあり、手帳作成のためのひとつのツールとしての役割も果たしていた。
4)、今回の取り組みでは、シールをきっかけに疑義照会を行うといった事例はなかったが、CKDシールの存在を北海道においても紹介し広めていくことができれば、腎排泄型薬剤の適正使用に寄与できると考えている。