「湿布剤の実際の使用状況と全身性の副作用についての調査」
日程:2012年6月16~17日
場所:札幌コンベンションセンター
研究者:(株)まつもと薬局
田中 啓介、大野 伴和、藤原 舞子、小川 美喜、松本 健春
目的
一般的に外用剤は安全性が高いと考えられ、適正使用が軽視されやすい。患者の自己判断による過量貼付を見逃すと、全身性の副作用が起こるリスクがあることも報告されている。そこで今回、湿布剤の実際の使用方法と、全身性の副作用発現について調査したので報告する。
方法
2011年11月~2012年3月までの間に湿布剤を1回に2枚以上貼付している患者を対象にしてアンケート調査を実施した。アンケートは、あらかじめ作成した調査票に基づいて行った。
結果
【性別・年齢・診療科】
アンケート結果一覧表
Q1:1回に貼る枚数どれぐらいですか?また、その部位は?
Q2:1日貼りかえの回数、貼りかえる時間は?
Q3:剥がれてしまったことはないか、貼り方の工夫は?
Q4:胃腸の調子はどうですか?
Q5:腎機能が低下していると言われた事はありますか?
Q6:痛み止め・胃腸薬等服用しているものはありますか?
対象となった湿布剤
湿布剤枚数別副作用発現率
湿布種類別副作用発現率
- モーラステープL40mg ・ ・ 18名中7名(38.9%)
- モーラステープ20mg ・ ・ ・ 6名中2名(33.3%)
- ファルケンテープ40mg ・ ・ 6名中2名(33.3%)
- アドフィードパップ40mg ・ ・ 14名中3名(21.4%)
- セルタッチパップ70 ・ ・ ・ 6名中1名(16.7%)
- MS温湿布 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1名中1名(100%)
注意枚数と思われ枚数以上、貼付していた人数
製品名 | AUC比較による 注意枚数 |
注意枚数以上 貼付していた人数 |
モーラステープL40mg | 4枚 | 12/18名(67%) |
モーラステープ20mg | 8枚 | 1/6名(17%) |
まとめ
- 診療科別では、整形外科以外の科で半数以上を占めており、専門以外の診療科でも多く出される傾向がみられた。
- 添付文書上に記載されている用法を超えて貼付していった患者は、モーラステープL40mgで8/18名(44%)、モーラステープ20mgで1名/6名(17%)おり、用法を厳守して使用されていないこともあった。
- 胃腸障害ありの患者は13名(28%)、腎機能障害ありの患者は2名(4.3%)と頻度だけで見ると高い割合で副作用の発現が認められた。また、胃腸障害がみられた方で、胃腸障害の原因ともなる痛み止めの服用が無かった方は9名(19.6%)おり、湿布剤に関連する胃腸障害である可能性が考えられた。
- 湿布剤の枚数別の副作用発現率は、それほど差がなかった。種類別では、吸収率もある程度あるモーラステープL40mgが最も多い結果になった。また、モーラステープL40mg貼付患者でAUC比較による注意枚数以上を貼付していた人数は、67%(12名/18名)いた。
考察
- 湿布剤は、専門分野である整形外科以 外の診療科においても繁用されるケースが多いため、その使用方法について患者に十分説明する必要性を感じた。また、用法についての説明の際にも、添付文書上の用法を遵守されていないケースも見受けられたため、再度使用方法について確認していく必要性があると考えられる。
- 湿布剤による胃腸障害・腎障害の副作用の発現については、明らかに湿布剤によるものかは不明であるが、副作用の発現と思われる症状が認められた症例もあり、特に吸収性の高い湿布剤等は貼りすぎによる副作用の発現に十分注意する必要がある。