「地域医療における服薬情報提供書の取り組みについて」
~保険薬局からの能動的な取り組み~
日程:2018年5月12日・13日
場所:札幌コンベンションセンター
研究者 :〇浅野 逸郎¹⁾、大野 伴和¹⁾、十河 弘樹¹⁾、鈴木 希¹⁾
堀 哲也²⁾、松本 健春¹⁾
1) まつもと薬局
2) 社会福祉法人 北海道社会事業協会帯広病院 総合診療科
緒言
服薬情報提供書は、保険薬局において得られた情報について、即時性は低いものの「処方医師への提供が望ましい」と判断された内容を報告する有用な手段である。しかし、十勝地方では保険薬局から処方医への服薬情報提供書を運用している病院は多くない。
取り組み
2017年4月1日から2018年3月1日までに、まつもと薬局から北海道社会事業協会帯広病院に対して服薬情報提供書をFAX形式にて29件送付した。
29件の内訳
診療科 | 内容 | 返信 | 処方に反映 | |
1 | 脳外科 | 他病院心臓血管外科との併用薬について | × | |
2 | 脳外科 | 中止薬の処方 | 〇 注² | |
3 | 総合診療科 | 認知機能について | ◎ | × |
4 | 総合診療科 | インスリンの処方コメント不適切 | ◎ | 〇 |
5 | 総合診療科 | 処方薬の受け取り拒否 | × | |
6 | 総合診療科 | 吸入薬の手技状況 | 〇 | |
7 | 総合診療科 | インスリンの針 | × | |
8 | 総合診療科 | 他病院皮膚科の処方内容 | ◎ | 〇 |
9 | 整形外科 | 検査値・NSAIDs | 〇 | |
10 | 整形外科 | 検査値・NSAIDs | × | |
11 | 整形外科 | 他病院併用薬確認もれ | 〇 注² | |
12 | 整形外科 | 用法の不適切 1日3回→2回 | × | |
13 | 神経科 | 他病院の併用薬も含めた経過状況 | × | |
14 | 神経科 | 不眠時薬についての処方提案 | × | |
15 | 神経科 | 認知機能について | × | |
16 | 神経科 | 残薬状況について | × | |
17 | 小児科 | 他病院皮膚科での処方内容 | 〇 | |
18 | 消化器科 | MTX・葉酸の内服曜日について | 〇 | |
19 | 消化器科 | 他病院の併用薬確認もれ | × 注² | |
20 | 消化器科 | 用法簡素化の提案 | × | |
21 | 消化器科 | 処方せん(グリベック錠)破棄 | × | |
22 | 循環器科 | 認知度の把握と処方日数の適正化 | 〇 | |
23 | 循環器科 | フェブリク20㎎0.5錠→10㎎ 1錠 | × | |
24 | 循環器科 | 他病院との重複処方 | ◎ | 〇 |
25 | 循環器科 | 残薬状況について | × | |
26 | 外科 | 下剤についての要望 | × | |
27 | 外科 | 睡眠薬についての処方提案 | × | |
28 | 外科 | 他病院整形外科とのビタミンD製剤重複 | 〇 | |
29 | 眼科 | 診察内容への不満 | × |
注 1)疑義照会した上で、主治医不在につき、経緯の詳細を情報提供した。
2)疑義照会した上で、他病院併用薬の詳細について情報提供した。
結果
29件の内訳は、医師から返信があり4件、まつもと薬局から提供した内容が処方に反映あり12件であった。
また、北海道社会事業協会帯広病院の総合診療科に限定した形ではあるが、医療連携の推進を目的に、服薬情報提供書の運用開始に至った。
情報服薬情報提供書の流れ
まとめ
- 保険薬局からの服薬情報提供書が処方に反映された事から、限られた時間での外来診療に おいては有用なツールと考えられた。
- 他病院の併用薬に関する服薬情報提供書が29件中8件あり、内服薬に関する包括的な把握は保険薬局が病院へ情報提供していく必要性を感じた。
- 保険薬局の能動的な取り組みが服薬情報提供書の運用導入の契機となった。
今後の課題
保険薬局からの服薬情報提供書に関する成功事例を集積する。
- 入退院のある患者に対する病院薬剤師との双方向型の情報共有。
- 薬剤の事のみならず、生活環境も踏まえた上で医療と介護を仲介する。
「病院完結型」の医療から、「地域完結型」の医療へ
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